文芸一般

小熊英二『社会をかえるには』

社会を変えるには (講談社現代新書) 小熊 英二 講談社 2012-08-17 ・祝祭と音楽の世界 神の意志をこの世に現すには、聖なる世界と交信するには、どうしたらいいのでしょうか。 一つのやり方は、お祭りであり、「政治」です。その場合、「代表(リプリゼンタ…

池上彰、佐藤優『新・戦争論』

新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方 (文春新書) 池上 彰 佐藤 優 文藝春秋 佐藤 いまの日本は、ある意味で、民主主義が進みすぎて息が詰まりそうになっているように思います。 民主主義は独裁と矛盾しません。一〇〇人の議員が九九人に減っても問題…

村上隆『芸術起業論』

・芸術には開国が必要である 天才が空白状態の中で作るものは歴史をガラリと変える可能性があるのですけれども、水準が高すぎたり時代の先に行きすぎたりしているために、リアルタイムでは正当な評価を受けられないかもしれないのです。 様々なしかけを組み…

村上隆『芸術闘争論』

芸術闘争論 村上 隆 幻冬舎 ・今日のアートー情況と歴史 いってみれば戦後の日本は、首輪をつけられないで育てられてしまった犬のようなものです。「自由」という名の野良犬が我々です。だから、社会という首輪をはめられてしまったらつらくて仕方がない。日…

内田樹、釈徹宗『はじめたばかりの浄土真宗』

はじめたばかりの浄土真宗 (角川ソフィア文庫) 内田 樹 釈 徹宗 角川学芸出版 (2012-05-25) 謙虚なたしなみの宗教性は、常態時において最も多くの人々が共有できることは間違いないと思います。 しかし、一本の道筋をたどり、態度を明確にし、エートスを形…

内田樹『内田樹による内田樹』

内田樹による内田樹 内田樹 140B 2013-09-06 「どうしていいかわからないときに、どうしていいかわかる」能力は「あらかじめ決められた正しいこと」を忠実に繰り返す能力とは違うものです。「荒天」用の能力と「晴天」用の能力と言ってもいいし、「乱世の能…

柴田元幸編・訳「ナイン・インタビューズ」

村上 ただ、その歪みみたいなものは、表層から離れて、もっと深いところにどんどん降りて行くと、歪みでもなくなっちゃうんですよね。(中略)だから小説家である僕らの仕事は、それをフィクションという形で、闇に沈めてしまうことだと思うんです。僕らの抱え…

内田樹『もういちど村上春樹にご用心』2010

実際には、私たちは意味もなく不幸になり、目的もなく虐待され、何の教化的意図もなく罰せられ、冗談のように殺される。天変地異は善人だけを救い、悪人の上にだけ電撃や火山岩を落とすわけではない。もっとも惜しむべき人が夭逝し、生きていることそのもの…

村上春樹「習慣について」

村上:習慣はすごく大事です。とにかく即入る。小説を書いているときはまず音楽は聴きませんね。日によって違うけれども、だいたい五、六時間、九時か十時ころまで仕事します。 - 朝ごはんは食べずに。 村上:朝ごはんは、七時ころにチーズトーストみたいな…

内田樹『街場の共同体論』

階層上位の人たちって、僕もたまに個人的に知り合う機会がありますけど、立場を超えて、だいたい基本的に「いい人」なんですよ。自己主張が控えめで、礼儀正しくて、穏やかで、ユーモアのセンスがあって。 当たり前ですよね。自分の帰属する共同体の中で、ま…

村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』

灰田 生まれつきなぜか、ものを作ることが不得手なんです。小学生のときから簡単な工作ひとつ満足にできません。プラモデルさえうまく組み立てられません。頭の中でものごとを抽象的に考えるのが好きで、どれだけ考えていても飽きないんだけど、実際に手を動…

京大生・教員ほか『ゆとり京大生の大学論』

佐伯啓思 私はこのような学生運動の「大学解体論」には組しません。いや、「大学解体」どころか、すでに「大学崩壊」に入っているように思えるのです。どうして崩壊したのか。その理由は二つあります。 1.ポストモダン状況 一つは、学問そのものの内的な理…

中島岳志『秋葉原事件 加藤智大の奇跡』

母の厳しすぎる教育と過度の介入、内面を見せることが苦手な性格、不満を言えず行動でアピールするパターン、キレやすい性格、突発的な暴力性、勉強の挫折、学歴へのコンプレックス、非モテ、外見、掲示板への没入、ベタのネタ化とネタのベタ化、承認欲求、…

内山節『新・幸福論 「近現代」の次に来るもの』

そういう時代(戦時中)を過ごした人々は、戦後に「軍部にだまされた」と語るようになった。確かに戦時中には報道の自由もなかったし、言論の自由もなかった。だが本当に一軍部にだまされた」のだろうか。むしろ戦中的イメージの世界に包まれながら、多くの人…

内山節 『「創造的である」ということ 上』

個人から出発して個人に帰る近代的な思考の構造 労働がいろいろな角度から、だんだん手段化し、労働それ自体を楽しむ事のできなくなってきたのが、現代なのではないでしょうか。つまり労働はつねに貶められているのです。 なぜそうなったのか。それは私には…

内山節 ローカリズム原論

日本の民衆たちは昔から、知性で語れることはむしろ表層的なこと、というとらえ方をしています。つまり、語りえない関係を重視するのが日本の人々の発想でした。それは結び合うなかに自分が存在している、自分の主体が存在していることを感じていた人々の発…

岡田斗司夫『評価経済社会』

評価経済社会 ぼくらは世界の変わり目に立ち会っている 岡田 斗司夫 ダイヤモンド社 2011-02-25 「工場での労働を想定して、公共教育は基礎的な読み書き算数と歴史を少しずつ教えた。だがこれは、いわば『表のカリキュラム』である。その裏には、はるかに大…

内田樹 もういちど村上春樹にご用心

もういちど 村上春樹にご用心 内田 樹 アルテスパブリッシング 2010-11-19 「高く堅牢な壁とそれにぶつかってくだける卵の間で、私はどんな場合でも卵の側につきます。壁がどれほど正しくても、卵がどれほど間違っていても、私は卵の見方です。(…)私たちはみ…

岸田秀 三浦雅士 一神教vs多神教

一神教 VS 多神教 (朝日文庫) 岸田秀 朝日新聞出版 2013-06-07 ・科学万能主義というのは、全知全能の唯一絶対神を殺してみたものの、神に支えられていた世界の秩序を失って不安になり、神の全知全能性を人間の理性に移して、人間が全知全能の理性を持ってい…

ショウペンハウエル 読書について

読書について 他二篇 (岩波文庫) ショウペンハウエル 岩波書店 1983-07 Amazon 楽天ブックス 自ら思索することと読書とでは精神において信じ難いほど大きなひらきがある。そのため思索向きの頭脳と読書向きの頭脳との間にある最初からのひらきは、ますます大…

内田樹 呪いの時代

呪いの時代 内田 樹 新潮社 2011-11 ・生き延びるためには僕たちの脳はかなりまじめに仕事をします。ところが日本では英語を使えなければ困る状況に遭遇することはほとんどありえません。だからロジックとしては簡単で「英語を使えなければ、ほんとうに困る…

内田樹 修業論

修業論 (光文社新書) 内田 樹 光文社 2013-07-17 ・道場とは楽屋のような場所。実験が許される、失敗が許される、試行錯誤が許される、自分の柔らかい部分をさらすことが許される。もし、道場で門人たちが、相対的な優劣や強弱を競うことをいつも気にかけて…

内田樹 最終講義

最終講義-生き延びるための六講 (生きる技術!叢書) 内田 樹 技術評論社 2011-06-24 ・誰のためにやっているのか。何を背負っているのか。もっぱら自己利益を追求するために勉強しているのか。自分のサクセスのため、なんて品の悪いこと思ってないか。人間…

内田樹 知に働けば蔵が建つ

知に働けば蔵が建つ (文春文庫) 内田 樹 文藝春秋 2008-11-07 私たちは経験的に「他人のふりをして語る」ときの方が「自分の正味の本音だけを選択的に語る」場合よりも口がくるくるよく回るということを知っている。それは言い換えれば「語る」という行為の…

内田樹 こんな日本でよかったね

こんな日本でよかったね―構造主義的日本論 (文春文庫) 内田 樹 文藝春秋 2009-09-04 ・コミュニケーション感度の向上を妨げる要員は「こだわり・プライド・被害妄想」(@春日武彦)であるので「こだわらない・よく笑う・いじけない」という構えを私は高く評…

内田樹 下流志向

下流志向〈学ばない子どもたち 働かない若者たち〉 (講談社文庫) 内田 樹 講談社 2009-07-15 弱者が弱者であるのは孤立しているからなんです。自己決定・自己責任とか、「自分探しの旅」とかいうイデオロギーに乗せられて、セーフィティネットの解体に同意し…

内田樹、岡田斗司夫 評価と贈与の経済学

評価と贈与の経済学 (徳間ポケット) 内田樹,岡田斗司夫 FREEex 徳間書店 2013-02-23 経済活動の基本原理そのものが「贈与と反対給付」であって、自分が経済活動の始点であるわけじゃない。パスが来たら、ワンタッチで次の人にパスをだす、そうするとすぐ次の…

内田樹 脱グローバル論

脱グローバル論 日本の未来のつくりかた 内田 樹,中島 岳志,平松 邦夫,イケダ ハヤト,小田嶋 隆,高木 新平,平川 克美 講談社 2013-06-11 ・グローバル人材になんてならなくていい。1日15時間働けて、どこでも辞令一本で飛んでいける人材、言い換えたらその場…

外山滋比古 思考の整理学

思考の整理学 (ちくま文庫) 外山 滋比古 筑摩書房 1986-04-24 ・ただせっせと本を読んでいると、大変な勉強家でありながら全く仕事をなさない人間になりかねない。とにかく書いてみる(やってみる)ということが必要だ。 ・情報を集めるだけでなく、情報を捨て…

内田樹 街場の文体論

街場の文体論 内田樹 ミシマ社 2012-07-14 「コンテンツは伝わるとは限らない。必ず伝わるのはメタ・メッセージだけ。」 コンテンツの上位にある解釈の余地のない意図だけが人に伝わる。ひとりよがりの文章はその自己満足ぶりが伝わるし、読者を見下した文章…