内田樹 街場の文体論

「コンテンツは伝わるとは限らない。必ず伝わるのはメタ・メッセージだけ。」

コンテンツの上位にある解釈の余地のない意図だけが人に伝わる。ひとりよがりの文章はその自己満足ぶりが伝わるし、読者を見下した文章はその傲慢さが伝わるし、妙にレトリックに凝った文章はその衒学的な意図ばかりが伝わる。相手に届きうるメッセージとは、必ず誰かに向けて発せられたもの。文章は読み手に対する敬意と愛を持って情理を尽くして書かれなければならない。 *** 言葉が届かないとき、まずチェックするべきはそのコンテンツのオリジナリティや論理的な整合性ではなくて、そのコンテンツを「誰に」「何の意図を持って」発しているか。それが不明であったりひとりよがりなものであったらコンテンツは解釈しようとすらされない。どんな言葉が共有されうるのか、は設計してるときもずっと考えてきたつもりだったけれど、結局のところ「独りよがりだった」につきる。発する言葉の上位にある意図は必ず他者に伝わる。それが自分に向けられたものなのか、だれかに向けられたものなのか。