建築・都市

バックミンスター・フラー その人と哲学

昔書いた建築意匠のレポート。なぜかインタビュー形式 *** 40年という短い間にあなたは建築家として、あるいは技師として、また発明・企画家、地図製作者、数学者として新聞のトップ記事をかざってきました。それにもかかわらずあなたはこれらのどれをも…

列島改造論2.0

(大野) 基本的に拡大期はユニバーサルでいい。一つ良い仕組みを考えて世界中でやりましょうというのがアテネ憲章のコンセプトだったと思います。ただ、縮小期は基本的に資源が少ないのであるものを利用するので、手持ちのものが違って個性的にならざるを得な…

ロラン・バルト『表徴の帝国』

「つまり、あの国では、宗教は礼儀にほかならない、あるいはまた、宗教は礼儀にとってかわられているのであると。」105頁 *** ロラン・バルト『表徴の帝国』再読。しみじみと面白い。 この国では、「形式」は「実質」に先立つ。それは能や茶道といった…

隈研吾「モダニズムからヤンキーへ 新建築2013.5」

新建築 2013年 05月号 [雑誌] 新建築社 2013-05 ・漂うモダニズム 槇は、「モダニズム」は輝きを失ったと指摘し、水村は、「文学」は輝きを失ったと言う。20世紀前半に生まれた「モダニズム」と19世紀の日本の近代化に合わせて誕生した「文学」にどんな類似…

R・ヴェンチューリ『建築の多様性と対立性』

彼らの作品に見られる多様性と対立性は見過ごされることが多いようである。例えばアアルトを評して、人は、彼の自然の素材に対する感覚や細かなディテールを称賛するものの、建物全体の構成は絵画風であることを狙ったものであると見なすのが通例である。 p.…

アルヴァーアアルト『エッセイとスケッチ』

アルヴァー・アールト エッセイとスケッチ 鹿島出版会 人間にとって必要な生物学的条件は、空気、光、太陽等である。(中略)光と太陽。極限状態にあっては、住宅への日当りを成行きまかせにすることは、もはやできないであろう。住むことの基本条件として、…

武藤章『アルヴァ・アアルト』

アルヴァ・アアルト (SD選書 34) 武藤 章 鹿島出版会 彼は図書館における最大の問題は光の問題だと考えたのである。読書に没頭するためには完全に外界と壁でさえぎられた環境が必要であり、それに対していかに均等な光を供給するか。彼はその問題に悩みなが…

ヨーラン・シルツ『白い机ー円熟期』

白い机 円熟期―アルヴァ・アアルトの栄光と憂うつ ヨーラン シルツ 鹿島出版会 彼にとってAかBかの二者択一はありえず、AもBもという両立あるのみだった。AとBを結び合わせよう、それらのあいだに調和のとれたバランスを見いだそうと、いつも努めていた。 p…

隈研吾『新・建築入門ー思想と歴史』

新・建築入門 ――思想と歴史 ちくま新書 筑摩書房 (2014-02-28) イスラム建築が残した最も印象的な多柱空間は、八世紀に建設されたコルドバの大モスクである。濃淡二色の石をゼブラ上に交互に積み上げて作られた背の低い柱。その石柱が無数に増殖することで…

隈研吾『建築的欲望の終焉』

建築的欲望の終焉 隈 研吾 新曜社 ・「住宅私有本位制」資本主義の崩壊 1920年代のヨーロッパが、公共住宅においてこのように輝かしい実績を積み重ねたのに大使、アメリカの施策は対照的であった。住宅不足が問題であったという点において、アメリカもヨー…

隈研吾『建築の危機を超えて』

建築の危機を超えて 隈 研吾 TOTO出版 ・建築の危機を超えて 危機は二種類のタイプの人間を生むというのが僕の直感であった。その二種類がマクベスとハムレットであった。危機に際して根拠不確かな魔女の預言を盲信して、行動に対するなんの疑いも逡巡もな…

隈研吾、清野由美『新・都市論TOKYO』

(槇文彦とヒルサイドテラスの話を受けて) 建物がヒューマンスケールで、がつがつしていなくて品がいい。(中略)建築家にとって夢の世界、ユートピアですよ。(中略)上品でがつがつしていない人を嫌いな人間なんていません。ヒルサイドテラスは、いわば究極の旦…

養老孟司、隈研吾『日本人はどう住まうべきか?』

結局、僕らの仕事で面白い建物を建てられるのは、いわゆる都市計画からこぼれ落ちた、そういう既得権でしか建てられないような、ヘンな場所です。(中略)建築としては、そういう物件の持ち主から声がかかるのが一番「やった!」と思うときですね。結局、一般…

隈研吾、三浦展『三低主義』

三浦 安藤忠雄さんは一見男根的に見えないところがかえって罪です。安藤さんも磯崎新さんも結局はコルビュジエが原点なんで、それでやはり革命好きなんでしょ?このへんも、団塊世代以降の隈さんや私とは本質的に違う所なんじゃないか。建築で革命なんてねえ…

原研哉『日本のデザイン』

シンプルという概念は、権力と深く結びついた複雑な文様を近代の合理性が超克していく中に生まれてきたという経緯を前節で述べた。しかしながら、日本文化の美意識の真ん中あたりにある「簡素さ」は、シンプルと同じ道筋をたどって生まれてきたものではない…

樋口忠彦『郊外の風景』

郊外の風景―江戸から東京へ (江戸東京ライブラリー) 樋口 忠彦 教育出版 風景は、単に目の前に見える世界ではない。目の前に見える世界を、風景として意識して見ることで、風景ははじめて見えてくる。風景として意識してみないことには、目の前に見える世界…

レイ・オールデンバーグ『サードプレイス』

サードプレイス―― コミュニティの核になる「とびきり居心地よい場所」 レイ・オルデンバーグ みすず書房 2013 序章 サードプレイスの一番大切な機能は、近隣住民を団結させる機能だ。多くのコミュニティで、郵便局がこの機能をよく果たしていたのは、誰もが…

北田暁大 広告都市・東京

増補 広告都市・東京: その誕生と死 (ちくま学芸文庫) 北田 暁大 筑摩書房 2011-07-08 〈発見〉されるべき差異が消失したとき、資本システムは広告という意味媒体によって差異を自己生産し、私たちの欲求を創出する。資本システムを稼働させる際が、空間的・…

アレックスカー 犬と鬼

犬と鬼-知られざる日本の肖像- アレックス・カー 講談社 2002-04-25 振り返ってみると、日本の「進歩」や「豊かさ」に対するスタンスは、だいたい四五年から六五年までの間に確立してきたものばかりだ。経済が空前の成長率を示し、今ある産業や銀行、官僚組…

東浩紀・北田暁大 東京から考える

東京から考える―格差・郊外・ナショナリズム (NHKブックス) 東 浩紀,北田 暁大 日本放送出版協会 2007-01 おそらく、東京という相対について思想的に語るなのてことは、もはや不可能だし無意味なんですね。けれども、他方で、いまも東京が生きて動いているこ…

ベンヤミン 複製技術時代の芸術

複製技術時代の芸術 (晶文社クラシックス) ヴァルター ベンヤミン 晶文社 1999-11-05 最古の芸術作品が発生したのは、周知のとおり、最初は魔法の儀式に、つぎには宗教的儀式にそれを供するためであった。さて、芸術作品はこのアウラ的性格がどうしても儀式…

建築意匠講義 香山壽夫

建築意匠講義 香山 寿夫 東京大学出版会 1996-11 肘掛け椅子の懐疑論 今日の芸術の多くは肘掛け椅子に座している人間の安楽と倦怠の中から生まれてくる。 人が生きるということは存在に対する信頼の上で行動している。つくる人は、ものの存在に対する信頼の…