内田樹『内田樹による内田樹』

  「どうしていいかわからないときに、どうしていいかわかる」能力は「あらかじめ決められた正しいこと」を忠実に繰り返す能力とは違うものです。「荒天」用の能力と「晴天」用の能力と言ってもいいし、「乱世の能力」と「平時の能力」と言ってもいい。この両方が適当なバランスで集団内部に分配されていないと、集団は生き延びることができません。「荒天型」、「乱世向き」の人間ばかり集めても、彼らはルール無視ばかりしているので、集団は保ちませんし、「晴天型」「平時向き」の人間ばかり集めても、想定外の危機に対応できないので、やはり集団は保ちません。両方のタイプが適当にまじりあっていないといけない。 人間集団が生き延びるためには、「多様性」と「秩序」の両方が必要です。「拡散する力」と「統合する力」と言い換えてもいい。ある程度の規模の集団が存続するためには、この二つの相反する力が均等に働いていないといけない。「多様化し、離散する力」と「斉一化し、統合する力」、この二つが拮抗しているときに、集団は健全な状態にあります。 pp.32-33 ***