内田樹、岡田斗司夫 評価と贈与の経済学

経済活動の基本原理そのものが「贈与と反対給付」であって、自分が経済活動の始点であるわけじゃない。パスが来たら、ワンタッチで次の人にパスをだす、そうするとすぐ次の人からパスがくる。パスを出さないで持っていると、次のパスがこない。資源を持っている人と資源を持っていない人の間に量的な格差があるように見えるけど、資源を持っている人はパスの流れの中にいて、すごい勢いでパスを通しているというだけ。貨幣も情報も評価も動いているところに集まってくる。「良きパッサーたれ」というのが社会人の重要な条件なんです。 まず贈与する。そうすると自分が今まで贈与されていた側だということに気づく。自分より弱い人間がいて、つまり自分が養う人間がいて初めて自分が確立する。人間は強い者に導かれて強くなるんじゃなくて、弱い者をかばうことでしか強くなれない。 自分には余剰が無いから誰にも贈与することができない。そのうちお金持ちになったり、出世したりして、余裕ができたら、贈与について考えてもよい、というふうに考えている人は贈与のサイクルに参加するチャンスが永遠にめぐってこない。 ネットのテクストでも最終的に淘汰の基準になるのは「そのテクストを読むことによって、生きる元気が出てくるもの」と「読むと気分が落ち込むもの」だと思う。嫌なやつが書く切れ味のいい悪口よりも、いい人の書く身辺雑記のほうが、長い期間を経過したあとはリーダビリティが高い。 ***