内田樹 最終講義

・誰のためにやっているのか。何を背負っているのか。もっぱら自己利益を追求するために勉強しているのか。自分のサクセスのため、なんて品の悪いこと思ってないか。人間は自己利益を動機にしていてもたいした力はでない。 ・それ以外の条件をすべて同じにしておくこと。ルーティンを守って暮らしていないと、絶対に「アカデミック・ハイ」は訪れてこない。 ・僕は若い頃からたくさんの研究者をみてきました。中には恐ろしいほど生得的に頭のいい若者がいました。そういうのは足が速いとか、力が強いというのと同じで生まれつきなんです。そういう桁外れの天賦の素質に恵まれている人って言うのは現にいるんです。でも、そういう諸君がそのあとすばらしい研究業績を残したかというと必ずしもそうではない。ほとんどの場合、そうではない。華々しいデビューを飾りながらぱたりと知的活動をやめてしまった。そういう例を僕は腐るほど観てきました。それはなぜかというと、目標の設定の仕方を間違えたからです。やっても無駄なこと、費用対効果の悪そうなことはしないから。でも、知性というのは「この辺で手を打つか」というような功利的なマインドを持ってしまった人間にはもう扱えない。 ・経験的にわかるんです。「問題児枠」とか「バカ枠」で一定比率、「変なことをやる人間」を採用しておいた方が、システムとしては安全なんですよ。組織成員が過度に標準化・規格化しないように、ときどき「異物」を混入させておくということは、リスクヘッジの基本なんです。 ***