熊代 亨『ロスジェネ心理学―生きづらいこの時代をひも解く』

  ・全能感を維持するために「なにもしない」人達 ここ最近、「価値のあるボク」「価値のあるアタシ」といった肥大した自己イメージを、いつまでたっても抱えている男女がそこらじゅうに溢れています。つまり、全能感を捨てきれない大人達が増えているわけですが、彼らが全能感を維持するメカニズムについては、あまり取り沙汰されていないようです。 1.自分が得意な分野で、全能感を何度も確認する 自分の優秀さや自分のバリューを確認しやすい場所で、それを反復的に確かめる、という方法です。(中略)ポイントとなるのは、「全能感が傷つく可能性の高いところには手を出さない」。 自分の値打ちを確かめ損ねてしまったら「全能ではない自分自身」「たいして価値のないかもしれない自分自身」に気付いてしまうかもしれませんから、そういう事態は避けなければなりません。実際、安定確実に優越性が示せるフィールド、反復的に自己評価を確認しやすいフィールドが、無意識のうちに選ばれるようです。 2.全能感が折られる可能性をぜんぶ回避する 「何もしない」「何も本気でやらない」人ほど、全能感は温存される、という話です。 本気で勉強しない、本気で恋愛しない、何にも真面目に打ち込まない……こういう処世術は今日日珍しくありませんが、現実世界で本当に全能・有能になるには向いていません。しかし気分として全能感を保持するには向いています。 なぜなら、全能感は「挑戦して、自分がオールマイティではないという事実に直面する」「それほどには価値のあるボクではないという事実を突きつけられる」まではいつまでも維持されやすいからです。 「http://d.hatena.ne.jp/p_shirokuma/20100119/p1」より ***