土屋博政『ユニテリアンと福沢諭吉』

   

宗教多元論の基本的な考え方

人は皆それぞれ自分の信じる思想や信条が最高であり、絶対であると考える。それは良い。しかし同時に、自分と異なる思想や信条を持つ相手の人もそう思っていることを知らねばならない。自分が自分の人生の主人公であると考えるならば、同時に自分と対立する人も、その人の人生の主人公であることを認める必要がある。自分の人生を侵されたくなければ、その気持ちを相手にも認めるべきだ。認めないのは独善である。相手に自分の考えを尊重してほしければ、自分も相手の考えを尊重しなkればならない。議論し、批判し合うのは、大いに結構。それは互いの進歩のために大切だ。しかし批判は建設的でありたい。相手の人格を否定する権利は何人にもない。思想は言うまでもなく、信仰、あるいは無信仰は、その人の人格と不可分である。だからその人の信念、もしくは信仰を否定することは、相手の人格を否定することになる。相手の信念や宗教がたとえ馬鹿げて見えたとしても、その人の信念や宗教を尊重せねばならない。人間はすべて相対的存在であって、他者を究極的に裁く事が出来るような絶対的存在ではない。最終判断はその人自身がするものだ。これは一人一人に与えられた権利である。以上が宗教的多元論の基本的な考えである。

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