都甲潔ほか 自己組織化とは何か

遺伝子の多様性は、視点を変えると、生物が無駄な遺伝子をわざわざ作り出す働きを行っているということになる。効率を考えれば、無駄なものは排除した方が良い。しかし、この無駄と冗長性こそが進化を育む土壌なのだ。(…)がらくたともいえる遺伝子のごった煮のプールは無駄が多いのだが、柔軟性をもった動的で革新的な世界を作り出す。あまりに不安定であれば生命は死に至るが、適度な揺らぎと不安定性がなければ進化は起こらないし、変化し続ける多様な地球上の環境に適応し、生き残ることはできない。理性の反対側にある感性や感情も、無駄と行ってなくしてしまえば、文化や芸術、そして科学も生まれてこないだろう。 pp.119 ***